西端泉先生の「これが本当の健康づくり運動」
やってはいけないエクササイズ
第9回 【 腹筋運動(両脚上げ) 】
前々回は、腰椎の圧縮力が3000ニュートンを超えると、腰椎の椎骨や椎間板がつぶれてしまう危険性があることを紹介しました。そして、シットアップ(上体起こし)では腰椎の圧縮力が3000ニュートンを超えるので「やめたほうがよい」ことをお伝えしました。
さらに前回は、腰椎に加わる圧縮力が3000ニュートンに満たなくても、その圧縮力が偏って加わると、腰椎や椎間板を損傷する危険性が高まることも紹介しました。そして、具体的に、基本的に安全性が高いと考えられているカールアップでも、腰椎の自然なカーブを保って行う方がよいことをお伝えしました。
今回は、腰椎の自然なカーブを保つことが難しい、もう一つの腹筋運動を紹介しましょう。
【ダブルレッグリフト】
その問題のある運動は、ダブル・レッグ・リフトです(図1)。この運動は、ストレイト・レッグ・レイズともよばれます。
まず、この運動で活動する骨格筋を明確にしたいと思います。
仰向けになり、両足を伸ばして、その両足を上げ下げします。この運動で動的に活動するのは、主に腸腰筋です。なぜなら、この運動は股関節の屈曲と伸展の繰り返しだからです。また、大腿直筋(だいたいちょっきん)も、能動的に活動します。大腿直筋は、膝関節の伸展筋として分類されることが多いのですが、股関節にも力を発揮する二関節筋であり、膝関節を伸展させながら(または伸展させた状態で)股関節を屈曲させるときに活動が高まることが知られています。
しかし、この運動を実施している人たちの多くは、腸腰筋や大腿直筋の運動としてではなく、腹筋運動として実施しています。この運動では、腹筋群も活動します。しかし、その活動は骨盤が動かないように固定するためのアイソメトリック(等尺性)で静的であり、動的なものではありません。

【AxlerとMcGillのデータ】
AxlerとMcGill(1997)は、腹筋を強化するさまざまなエクササイズの際の、腹直筋の活動の程度と、腰椎に加わる圧縮力を調べました。腹直筋を強化するためには、そのエクササイズの最中に腹直筋が強く活動する必要があり、安全性のためには、腰椎に加わる圧縮力は弱いほうがよい。そこで、腹直筋の活動量を腰椎に加わる圧縮力で割った値が大きいほど、より安全で効果的なエクササイズということになります(図2)。
この研究の結果、最も優れているのは足を固定したカールアップ(CSTFFIX)でした。しかし、すでに説明したように、カールアップでは脚は動かないはずなので、なぜ動かないはずの足を固定するほうがよい数値が得られたのかはわかりません。
ダブルレッグリフトは10位で、とても勧められるものではありませんでした。なぜ、10位に低迷したかというと、一つは、すでに説明したように、この運動で主に活動するのは腸腰筋であり、腹直筋ではないからです。なので、腹直筋を強化する効果的な運動とはいえません。また、前項の表1で示したように、腰椎に加わる圧縮力が2525ニュートンと大きいからです。さらには、腰椎の自然なカーブを維持することが非常に難しいからです。

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