西端泉先生の「これが本当の健康づくり運動」
やってはいけないエクササイズ
第14回 人と組んで行うストレッチング [前編]
私が勤めている川崎市立看護短期大学は、神奈川県川崎市幸区の住宅街の中にあります。もともとは、その地域の中学校を造る予定の土地に立てられた短期大学です。このため、本学のグラウンドは、週末は、近隣の子供たちに開放され、毎週のように少年野球の試合が行われます。
たまたまある土曜日に出勤した時、玄関先で行われているある少年野球のチームの試合前のウォームアップをながめていました。すると、そのチームのコーチは、子供たちを2人組にし、1人を地面に長座させ、もう1人に後から背中を押させ、からだを前に曲げる古いタイプの柔軟運動を行うように指示しました。さらには、柔軟性の劣っている子どもには、コーチ自身が子どもの背中に覆いかぶさり、痛がる子どもを無視して、むりやり前屈させようとさえしていました。
私は「いまだにこんなことが行われてるいのか!」と面食らってしまいました。もし、子どもが腰などを痛めることがあれば、犯罪とも言える行為ともなり得ます。
【柔軟運動とストレッチング】
柔軟運動とは柔軟性を高める運動のことで、英語ではストレッチングとよばれます。
ストレッチングというと、一般的には、伸ばした姿勢をしばらく維持するスタティック(静的な)ストレッチングを意味します。しかし、スポーツの場合はダイナミック(動的な)ないしはバリスティック(反動を使った)ストレッチングの方が適している場面もあるので、スポーツを行う場合には、ダイナミックおよびバリスティックストレッチングについても理解しておく必要があります。
最初に書いた「子ども野球」はスポーツです。そうすると、従来の反動を使った柔軟運動の方が適している可能性もあります。しかし、私が問題視したのは、二人で組んで行う方法についてです。
【なぜストレッチングが普及したか】
現在は学校体育でも行われているストレッチングは、別名「静的ストレッチング」ともよばれ、目的とした骨格筋をゆっくりと伸ばし、伸ばした姿勢で静止するものです。そして、多くの場合、ストレッチングといえばこのスタティックストレッチングをさします。
なぜ、スタティックストレッチングが優れているとして推奨されているのかといえば、伸ばそうとしている骨格筋を傷める危険性が低いからです。
私たちは、立位や座位において、自分の姿勢をほとんど意識することなく、姿勢を保っています。なぜこのようなことが可能かといえば、姿勢を反射的に調節しているからです。反射とは意識に上ることのない神経系による自動的な調節機能のことです。特に、姿勢反射は脊髄反射なので、脳で判断することなく瞬時に姿勢の調整が行われます。
骨格筋の中には筋紡錘(きんぼうすい)とよばれるセンサーがあり、骨格筋の張力を常に見張っています。

図1は大腿四頭筋にあるものを示していますが、例えば、立位で後ろに倒れそうになると、股関節は伸展し、膝関節は屈曲するので、大腿直筋が引き伸ばされます。これが大腿直筋にある筋紡錘を刺激し、反射的に大腿直筋を短縮させ、股関節を屈曲させたり、膝関節を伸展させたりすることによって、転倒しないように姿勢を調節します。
この、骨格筋を伸ばす外的な刺激に対して、その骨格筋を短縮させる反射のことを、伸展反射、ないしは伸張性反射とよびます。
姿勢を保つために、姿勢反射は素早く反応する必要があるので、筋紡錘は、すばやい骨格筋の伸展に強く反応する傾向があります。しかし、ゆっくりとした伸展にはあまり反応しませんし、ゆっくりとした伸展に対する反射は遅いので、意図的に抑制することもできます。
伸張性反射を起こし短縮しようとする骨格筋をストレッチングで伸ばそうとしても十分に伸ばすことはできませんし、無理に伸ばそうとすると、骨格筋(またはその中のフィラメントなどの微細な部品)が切れてしまう恐れもあります。そして、傷害を起こした部位は癒着(ゆちゃく)し、逆に柔軟性が低下してしまう恐れがあります。
そこで、伸展反射を起こさないように、目的とした「骨格筋はゆっくりと伸ばし、伸ばした姿勢をしばらく保った方が良い」という考え方に立ったストレッチングがスタティックストレッチングです。
【予告】次週は少年野球チームの問題点を徹底解説!お楽しみに
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